金銭の支払を求めるために裁判をして,ようやく勝訴判決を獲得したとしても,債務者が任意に支払ってくれない場合には,強制執行する他ありません。しかし,強制執行をするとしても,債務者にどのような財産があるか把握できなければ,強制執行も困難となります。
このような場合に,弁護士がとり得る財産調査の方法は複数考えられますが,今回は財産開示手続について,見てみたいと思います。
財産開示手続とは,債務者を財産開示期日に呼び出し,所有する財産を述べさせる手続きのことを言います。
財産開示期日で,債務者の財産状態を知ることができれば,債務者が開示した財産に対して,債権者は強制執行することができるため,債権回収の実効性が確保されることになります。
しかし,民事執行法改正前は,この財産開示手続については,あまり利用されていませんでした。
なぜなら,債務者が,財産開示期日に正当な理由がないにも関わらず出頭しなかったり,あるいは出頭しても財産について回答しなかったり,嘘をついたとしても,30万円の過料が科されるのみだったからです。
例えば,多額の支払を命じる判決を下された債務者の中には,財産開示期日に不誠実に対応することで自らの財産に対する強制執行を免れることができるのであれば,過料として30万円を支払った方が良いと考えるような人が出てもおかしくない状態だったといえるでしょう。
このように改正前の財産開示期日については,制裁が弱いことが問題でしたが,改正後の民事執行法は,財産開示手続の実効性を向上させるために,懲役刑を含む刑事罰が導入されました。具体的には,財産開示期日において,正当な理由のない不出頭や宣誓拒絶,正当な理由のない不陳述,虚偽陳述をした場合には,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(改正民事執行法213条1項5号・6号)。
実際に,改正法施行後は,捜査当局によって財産開示期日に不出頭しなかった者に対して,逮捕等されている事案も報道されており,今後の実務の運用に期待したいと思います。
ただし,捜査当局が自ら摘発にまで動くことは稀であり,ほとんどの場合,債権者からの告発が必要と考えられますので,ご注意ください。