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弁護士法人金沢税務法律事務所

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面会交流費用の負担について

面会交流に係る費用を誰が負担すべきかについては,調停条項において明確に定められている場合は問題ありませんが,単に面会交流の日時,場所及び方法等については当事者間で協議して決める等と定めることも多いように思われます。

そうすると,当事者間で面会交流の費用負担等についてまで事前に協議がまとまり面会交流が実施される場合は格別,そのように円滑に協議がまとまらない場合には,面会交流の費用を誰が負担するか問題となり得ます。

この点について判断をした裁判例(判時2206号20頁)がありましたので,ご紹介させていただこうと思います。

事案は,X(夫)がいる仙台市の自宅からY(妻)が未成年者(A)を連れて出ていった後,YがAと共に札幌市で生活していたという状況において,Xが面会交流の調停を申し立てたが,面会交流の場所について折り合いがつかなかったため,調停は不成立に終わり審判に移行したというものです。

札幌家裁審判平成24年4月9日は,面会交流の場所は札幌市内及びその周辺とし,面会交流に係る費用は各自の負担とするとの内容の審判をしました。これに対して,Xが,仙台市に居住するXが多額の旅費を負担するのは不公平であるなどと主張して即時抗告をしたところ,札幌高決平成24年10月3日は,以下のような理由で面会交流に係る費用は各自の負担と判断しました。

「面会交流は子の福祉のために実施するものであって,面会交流に係る費用については,面会交流実現のためにそれぞれの親が支出したものについては,支出した者が負担すべき筋合いのものといえよう。」

(仙台市に居住するXが多額の旅費を負担するのは不公平であるとの主張に対して)「非監護親と未成年者との面会交流は,親と子の双方にとって親子間の自然な情愛に基づくものであり,未成年者の安定的で健全,幸福な成長を促すために実現されるものであるから,面会交流に係る費用は各自の負担とするのが公平である。」

上記判断に対し,Xは抗告の許可を申し立てましたが,最高裁も「所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができる。」と判示して,抗告を棄却しています。

上記裁判例に従えば,面会交流に係る費用は各自の負担となります。

ただし,この事案では,YがAを一方的に連れ去ったとは評価できないことが前提となっていますので,YがAを違法に連れ去ったような事案では異なる結論もあり得るでしょう。