窃盗罪をはじめとする領得罪(窃盗のほかに、強盗、詐欺、恐喝、横領など)の成立を肯定するためには、その主観的要件として、不法領得の意思が必要であるとされています(判例、通説)。
その内容は、①「権利者を排除して他人の物を自己の所有物として」、②「その経済的用法に従い利用、処分する意思」と判例上、解されています。
軽微な無断一時使用である使用窃盗は、①の意思(権利者排除意思)を欠くものとして、不可罰とされます。ただし、判例上、使用窃盗を理由として不可罰とされたケースは極めて少ないです。
また、毀棄目的で財物を奪取した場合には、②の意思(利用処分意思)を欠くものとして、窃盗罪は成立しないことになります。その後の行為によって、器物損壊罪(隠匿行為も「損壊」にあたります。)や遺失物等横領罪などが成立する可能性があります。
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(遺失物等横領)
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
【参照文献】
・山口厚『刑法各論』197頁以下
・大塚裕史「窃盗罪における主観的要件⑴~⑶」(法セミ2018年10月号~同年12月号)